担当者が退職するたびに業務が止まる会社に欠けた設計とは

「引き継ぎ書は作った。後任も決めた。それでも退職から数週間、後任の机では前任者への電話が続いている」
——引き継ぎのたびに、同じことが起きていないでしょうか。
原因は引き継ぎ書の出来ではなく、その仕事がまだ言葉になっていないことのほうです。
そして言葉にする作業は、本人に「書いておいてください」と頼んでも、なかなか進みません。
今日は、その仕事を誰の手にも渡せる形にするまでに、社内で何をどの順番でやるかをお伝えします。
引き継ぎ書に書けないものが残っている
ひとつの仕事の中には、性質の違う部分が混ざっています。手順どおりに進めれば終わる部分、社内で決まったやり方がある部分、その人の勘に頼っている部分。引き継ぎ書に書けるのは、はじめの2つまでです。
「この数字が少しおかしいときは、先にあの部署に聞く」
——こうした判断は本人にとって当たり前すぎて、書き出す対象として意識にすら上がってきません。
そして引き継ぎのたびに苦労する会社は、たいてい「決まったやり方」の部分が育っていません。
これは「あの人が仕事を抱え込んでいる」という個人の問題ではなく、会社としてその仕事を定義しきれていないという状態のほうです。ここを取り違えると本人を責める話になり、まず協力してもらえなくなります。
書き出す前に、出口を決める
いきなり「あなたの仕事を教えてください」と始める前に、決めておくことがあります。
書き出した先、その仕事をどうしたいのかです。
- 複数人で共有して、誰かが休んでも回るようにするのか
- 誰がやっても同じ形になるよう、やり方そのものを決めてしまうのか
- 引き継ぐ相手を決めて、その人に渡すのか
どれを選ぶかで、書き出す細かさも、その場に呼ぶ人も変わります。共有が出口なら関係者に集まってもらいますし、渡す相手が決まっているなら二人で十分です。出口を決めずに始めると、立派な資料が1つ残って終わります。
決めた目的は、現場にも先に伝えてあげてください。
「〇〇さんに仕事が集まりすぎているので、休んでも回る形にして負担を分けたい」で十分です。属人化の解消そのものを掲げると、現場には「自分の仕事を取り上げる話」に聞こえてしまうことがあります。
頭の中ではなく、机の上を書き出す
用意するのは付箋です。本人と一緒に、その仕事を「何が来たら始まるのか」「自分は何をするのか」「何を出すのか」「それを誰が何に使うのか」「いつやるのか」の形で書き出していきます。

コツは、自分の作業だけで終わらせず、その前後まで書いてもらうことです。
「この資料、出したあとは誰がどう使っているんですか」と聞くと、本人も曖昧にしか知らない場所が見つかります。前後の担当者を突き合わせると「実はこれ、もう使っていません」が出てくることもあります。
付箋にするのは、順番を入れ替えたり後から足したりできるからです。
流れがすらすら出て整った図ができたら、そこで終わりにしないことです。それはたいてい建前の流れで、判断は例外の側に隠れています。「もし情報が揃わなかったら、どうしますか」「先方の返事が来ないまま期限が来たら?」と、つついてみてください。
ここで返ってくる「まあ、ケースバイケースですね」が、いちばんの壁です。そのまま引き下がらず、具体的な場面を一つ出して聞き直してあげてください。「たとえば先月の〇〇の件は、どうされたんですか」と。抽象的な質問には、抽象的な答えしか返ってきませんので。
まとめ:全部を残そうとすると、必ず止まる
ここまで進め方をお伝えしてきましたが、こうして見ると、要るのは立派な引き継ぎ書ではなく「出口を決めてから、例外を含めて書き出す場」のほうだということがわかります。
最後に、いちばん多い失敗を。全部を残そうとすることです。
- 完璧なマニュアルを作ろうとする → 更新されなくなり、やがて読まれなくなります
- 例外まで全部を仕組みに載せようとする → まず、その例外は今も必要でしょうか。必要だとして、仕組みに載せるのか手作業のまま残すのか。ひとつずつ決めていくものです
7割の出来で走り出して、使いながら足していくほうが結局は続きます。
ここまでは、社内だけでも進められる範囲です。難しくなるのはこの先——何を残して何を捨てるか、どこから仕組みにして、どこを人の手に残すか。この線引きは、会社ごとに違います。
迷ったら、書き出した付箋をそのまま持って無料相談にいらしてください。準備は、その付箋だけで十分です。
